キャッツ・アイ 52話「甘い誘いに 気をつけて」

シナリオ:柏原寛司
ディレクター:こだま兼嗣
原画:神村幸子、川越ジュン、あべじゅん子、菖蒲隆彦

美人ばかりを狙う美術館の変態館長(長谷部)に瞳が誘拐される話。


泪と愛が長谷部の家に忍び込んで部屋を物色するシーンで、天井から降りてきたり、やテーブルを軽く飛び越える動きがあるんですが、そこは身の軽さが感じられてなかなか良い感じです。瞳と長谷部の車の中でのやりとりのシーンでは、革シートの質感や、車のキー(キーホルダー)の装飾や、木目調のインテリア、パワーウィンドウのスイッチまでしっかり書き込んであります。こういったディテール感ある作画は相変わらず良い仕事しています。今回もトシは『喫茶キャッツ・アイ』から『犬鳴署』へと走ります。階段を飛び越えて手前に、カット切り替えで奥へと一直線に走っていく。こういうカットはイルカ回の十八番ですね。相変わらずいい味しています。モンタージュ写真を見た課長に机を叩いて迫る迫るトシのカットここもおそらく神村さんですね。まだどう説明していいのかわからないんですが、トシの足つきがいいんですよ。ズボンの裾が絞ってあってちょっとツマ先立ちで。今回も一応長谷部との格闘シーンがあるんですが、そこは割と普通でした。そういえば今回は『イルカ急便』なる会社が出てきます。もちろんマスコットマークはイルカで(笑)


今回の話後半は「早く助けないと酸欠で瞳が死んでしまう」という緊迫した状況が続くんですが、非常に集中してみる事ができました。ここになってやっとこだまさんのBGMの使い方の上手さに気付きました。注意してないと全然聞こえないんですよ。場の空気を表現するために最小限に使っていて、会話や芝居に集中することができます。こだまさんは演出家としてはキャッツの中では福富さんとは逆の方向になるんでしょうか。もちろん福富さんは福富さんで面白いんですが。


某所で今の原作付きTVアニメに対する神村さんの考え方が書かれていて「視聴者はなぜ、原作の味を損ねているテレビアニメーションを見てくれているのでしょうか。」という疑問が投げかけられていました。神村さんがこう考えるのも無理は無い話で、少なくとも高畑チーム時代からスタジオイルカまでで見た来た神村さんの仕事で原作の良さを損なう仕事はありませんでした。自分が原作を知らないだけで、知ってる人からすれば実は原作の方が面白いのかもしれませんが、自分としては充分満足できるものを見せてもらってます。原作の良さをしっかりと汲み取った上で、漫画では出せない動く芝居の面白さを作画で感じさせるのはとても素敵だと思いますよ。