稲野義信を味わおう!

味わい系アニメーター、稲野義信さんが参加されたアニメの中でもかなり稲野さんのウェイトが大きいものを見ていこう。時間があればシリーズ化も。
稲野さんの特徴は、肩と腰の入ったポージングと手首の返し。少ない枚数ながらも入りと抜きのポイントを押さえた流れるような原画。特に歩いたり、モノを投げたりするときの腕を振り方、特に手首と小指の強調の仕方を見ると稲野さんの原画だと判別できるはず。他にも、布や髪の毛といった物の流れるような質感の表現も絶品。


以下を読む前にhttp://www002.upp.so-net.ne.jp/kitaro/sakuga_inano.htmlを見てもらえると分かりやすいです。

ゲゲゲの鬼太郎 82話「妖怪串刺し入道」
演出:芹川有吾
作画監督・原画:稲野義信

なんと稲野さんの一人原画回!串刺し入道のやたら光った針を投げるフォーム、鬼太郎の笛の構えかたが稲野さんっぽい味。貼り付けられている鬼太郎とネズミ男の服の伸びるようなシワにも稲野さんのこだわりが!まさに使い古したやわらかさを持ったゾーキンのような味(笑)墓場から甦ったガイコツ達が※稲野歩きで行進してくる様子はなんか笑える。雷入道の放つ電撃がフラッシュしたように見えるのは稲野さんのアイデアなのか、演出からの指示があったのかわからないけどなかなかいい感じ。最後に雷入道を皆で見送るところの手首が入って流れるような手の振り方も稲野さんらしい。

ゲゲゲの鬼太郎 90話「妖精ニクスの青い涙」
演出:柴田浩樹
作画監督稲野義信
原画:及川博史 稲野義信

ネコ娘が稲野ポージングで「公園が大変なのよ!」と言った所からすでになにか怪しい気配が…。次の公園シーンは確かに(作画的に)大変なことに!(笑)妖精の力での大人と子供が仕事や勉強を忘れて遊び呆けるというモブシーンはもう完全に稲野ワールド。稲野キャラ全開で、大人と子供、それぞれのキャラクターが各自の個性に従って芝居をしている。稲野さんのデッサン力と芝居力がなければ動かせないカットだろうなぁ。


稲野さんの描く鬼太郎キャラはどれも異様な臭さや汚さを持っていて、水木ワールドにはかなりマッチしてる。でもやっぱり夢子だけはすこし違う感じ。妙に下膨れした頬にアゴを強調した(湖川風?)顔で、やたらかわいらしい動き。特に何かに怯えて、手を口元に持ってくるポーズは妙にかわいい。ここでも小指がいい味(笑)(例:鬼太郎OPのラスト)


※稲野歩き:指先というより、手首に腕の重心を置いた腕の振り方で、手首が先に前に出て、その後に手が半円を描くように動く。